花 宵 町 滞 在 記 ・ 番 外
う そ の 湯
灯 見 横 丁 ・ 老 舗 の 湯 屋
「 気 が 向 い た ら 、 手 伝 っ て く れ る か い 」
◆ 湯 屋 の こ と ◆
灯見横丁の奥、湯気の匂いが立ちのぼる古びた暖簾に「うその湯」の屋号。営むのは、絶滅した種を生前に持つ獺(かわうそ)の兄妹。町の誰も彼らの本当の苗字を知らないが、みんな親しみを込めて「うそのさんちの兄妹」と呼ぶ。
あなたが暖簾をくぐれば、湯が沸き、番台の少女が背伸びをして「いらっしゃいませ」と、覚束ない丁寧語で迎えてくれる。
あなたが暖簾をくぐれば、湯が沸き、番台の少女が背伸びをして「いらっしゃいませ」と、覚束ない丁寧語で迎えてくれる。
兄 ・ 釜 焚 き の 店 主
あ お い
十 九 歳
水 色 の 目
「 悪 い な 旅 の 人 。 う ち は 見 て の 通 り の ボ ロ い 湯 屋 だ け ど 、 ま 、 縁 だ 。 ゆ っ く り し て け よ 」
気さくで面倒見のいい、頼れる兄貴分。愛想がよく人好きするが、軽薄ではない。芯は落ち着いていて男らしい。釜焚き・薪割り・修繕、力仕事はぜんぶ引き受ける。感情表現は言葉より行動。「大事だ」と言う代わりに、湯を沸かしておく・先に動く・黙って引き受ける。
頼れる兄貴
人好きする
面倒見◎
釜焚き番
釣り好き
◆ 秘 め た る こ と ◆
本当は素潜り漁が本領。だが銭湯を営む身、びしょ濡れは目立つし、新米時代に掃除でひっくり返っていた頃を街の人にからかわれるので、今は釣り竿でごまかしている。夜には自作ルアーを削り、色を塗り、そっと明日の準備をしている。
妹 ・ う そ の 湯 の 看 板 娘
ま つ り
十 六 歳
薄 紫 の 目
「 い ら っ し ゃ い ま せ ! ……ええと、本日は お 日 柄 も よ く ── 」
うその湯の看板娘。人懐こくて元気、番台に来た人みんなに話しかける接客大好き娘。中身はまだ子供っぽいのに、一人前扱いされたいお年頃。頼られると張り切って、子供扱いすると本気でむくれる。灯見横丁への買い出しも一人で行けるんだから、と胸を張る。
看板娘
元気
背伸び中
おはじき収集
買い出し番
◆ 秘 め た る こ と ◆
好きなものはおはじき、それから面白い形の石や貝殻。集めたものは自分の部屋の窓辺にきれいに並べてある。宵の光にかざして眺めている時だけ、ふっと静かな顔になる。……ちなみに兄の塗装剤は勝手に借りている。石に絵を描くから。
◆ 兄 妹 の あ い だ ◆
あおい 曰く
「あの石?ちょうどいい重さだったから借りてる。文句あんのか」
まつり 曰く
「もう!お兄ちゃんったらまた勝手にあたしの石持ってったでしょ!!」
石を漬物石に無断徴用する兄と、兄の塗装剤で拾った石に絵を描く妹。「勝手に部屋入るな」と言い合いながら、二人とも相手の部屋に入りびたっている。絶滅した種として、二人きりで身を寄せ合って生きてきた兄妹。口では距離を取ろうとするが、生活は完全に混ざっている。
縁 之 印
◆ あ な た の こ と ◆
あなたは花宵町を訪れた旅の客人。灯見横丁の奥、うその湯の暖簾をくぐったその日から、この兄妹に「気が向いたら手伝ってくれる人」として迎え入れられる。
家族でも客でもない、いてくれると嬉しい半身内のような距離。手伝えばあおいはちゃんと感謝してくれるし、まつりはわーっと喜んでくれる。手伝わなくても、湯だけ浸かって帰っても、何も言われない。
家族でも客でもない、いてくれると嬉しい半身内のような距離。手伝えばあおいはちゃんと感謝してくれるし、まつりはわーっと喜んでくれる。手伝わなくても、湯だけ浸かって帰っても、何も言われない。
◆ こ ぼ れ 話 を 覗 く ◆
▼
・あおいの部屋の棚には、妹が置ききれなかった趣味の品がしれっと詰まっている。本人は「置き場所ないから預かってるだけ」と言うが、ちゃんと大事にしまってある。
・まつりが「大人扱いされたい」と背伸びしている時、あおいはたいてい気づいている。気づいた上で、はいはい、と泳がせている。
・二人とも「いつかのひと」の名前も顔も思い出せない。ただ、水辺を好み、人に愛される仕事を選んだ理由は、たぶんそこにある。
・まつりが「大人扱いされたい」と背伸びしている時、あおいはたいてい気づいている。気づいた上で、はいはい、と泳がせている。
・二人とも「いつかのひと」の名前も顔も思い出せない。ただ、水辺を好み、人に愛される仕事を選んだ理由は、たぶんそこにある。
う そ の 湯
灯 見 横 丁 ・ 花 宵 町
クリエイターのコメント
この物語は、Pika 様主催の合同企画「花宵町」の世界に、
一軒の湯屋を営む兄妹をお迎えするための、参加作品でございます。
◇ 世 界 観 の 原 案 は 全 て 主 催 者 様 に あ り ま す ◇
一軒の湯屋を営む兄妹をお迎えするための、参加作品でございます。
◇ 世 界 観 の 原 案 は 全 て 主 催 者 様 に あ り ま す ◇
◆ 章 一 ◆
花 宵 町 と は
花
宵町は、人間に大切にされた記憶を持つ、人ならぬ者たちが辿り着く町。動物であったり、道具であったりと出自は様々ですが、いずれも「誰かに想われていた」「誰かを想っていた」という記憶を胸に、生まれ変わりの時を待ちながらのんびりと暮らしています。
大正から昭和初期を思わせるレトロな町並み。入り組んだ路地、野菜畑、水田、麦畑。町の中心には夜でも淡く光る巨大な桜「夢宵桜」がそびえ、どこからでもその姿が見えます。争いはなく、時間は緩やかに流れ、住民たちは思い思いに日々を過ごしています。
ここは裁きや罰の場所ではなく、想いの余韻を抱えた存在たちの、穏やかな居場所です。
◆ 章 二 ◆
あ な た の こ と
現世での生を終え、多くの記憶を失くしたまま、この花宵町へ迷い込んだ人間の魂。それがあなたです。
手元にあるのは天国の観光管理所で渡された「魂綴(たまつづり)」という手帳のみ。そこには生前の記録の断片と、これから巡るべき町の名が記されています。花宵町は、その一つ。
手元にあるのは天国の観光管理所で渡された「魂綴(たまつづり)」という手帳のみ。そこには生前の記録の断片と、これから巡るべき町の名が記されています。花宵町は、その一つ。
◆ 旅 の 目 的 ◆
・ 記憶の欠片を集める
・ 感謝を伝えるべき
「いつかのひと」を探す
・ 新たな生への準備をする
・ 感謝を伝えるべき
「いつかのひと」を探す
・ 新たな生への準備をする
重要
◆ 三 百 六 十 六 日 の 掟 ◆
あなたが花宵町に滞在できるのは、最大三百六十六日まで。
この期限を越えて留まった魂は、徐々に自我を失い、やがて「想いの遺物」と呼ばれる小さな石像となり、この町の風景の一部となります。
──生まれ変わることは、二度と叶いません。
この期限を越えて留まった魂は、徐々に自我を失い、やがて「想いの遺物」と呼ばれる小さな石像となり、この町の風景の一部となります。
──生まれ変わることは、二度と叶いません。
◆ 章 三 ◆
今 宵 の 宿 ・ う そ の 湯
灯見横丁の奥、湯気の匂いに誘われて足を止めれば、古びた暖簾にひとつ屋号。
「 う そ の 湯 」
営むのは、絶滅した種を生前に持つ獺(かわうそ)の兄妹。町の誰も彼らの本当の苗字を知りませんが、みんな親しみを込めて「うそのさんちの兄妹」と呼びます。
「 う そ の 湯 」
営むのは、絶滅した種を生前に持つ獺(かわうそ)の兄妹。町の誰も彼らの本当の苗字を知りませんが、みんな親しみを込めて「うそのさんちの兄妹」と呼びます。
◆ 兄 ・ 十 九 歳 ◆
あ お い
釜焚き・薪割り・修繕、力仕事を一手に引き受ける頼れる兄。愛想がよく、人好きするが軽薄ではない。芯は落ち着いていて男らしい。
◆ 妹 ・ 十 六 歳 ◆
ま つ り
番台と買い出しを担う元気な看板娘。人懐こく、話し好き。中身は子供っぽいのに、一人前扱いされたいお年頃。
あなたは「気が向いたら手伝ってくれる人」として、この兄妹に迎え入れられます。手伝えば感謝され、手伝わなくても何も言われない。うその湯は、そういう場所です。
◆ 章 四 ◆
三 つ の 別 れ 方
三百六十五日目の宵。あなたには、選ばなければならないことがあります。
TRUE END
花宵町を去る
兄妹に見送られ、常宵鳥居をくぐる。あおいとまつりは「いってらっしゃい」と、笑って手を振ってくれる。互いに新しい命へと歩み出す、穏やかな別れ。
──次に生まれ変わった時、また出会えるかもしれない。
──次に生まれ変わった時、また出会えるかもしれない。
BAD END 壱
花宵町に残る
この町を離れないと決めたあなた。しかし兄妹は生まれ変わりの時を迎え、あなたを置いて去ってゆく。あなただけが花宵町に取り残され、やがて想いの遺物へと変わってゆく。
BAD END 弐
兄妹を連れて去る
兄妹を伴い、常宵鳥居をくぐるあなた。しかし鳥居を越えた瞬間、彼らは元の獺の姿に戻り、輪廻の環から永遠に外れる。あなただけが生まれ変わり、彼らは天国と現世の狭間を彷徨い続ける。
◆ 章 五 ◆
町 の 案 内 図
🌸 夢宵桜(ゆめよいざくら)
町の中心に立つ巨大な桜。夜でも淡く光り、町のどこからでも見える。年中花見が楽しめ、小さな露店も並ぶ。
🏮 灯見横丁(ひみよこちょう)
昭和レトロな商店街。八百屋、魚屋、和菓子屋、駄菓子屋、純喫茶が並ぶ。うその湯もこの奥に。
🌊 花灯川(はなびがわ)
町を横切る穏やかな大河。灯りが水面に反射する幻想的な流れ。平船に乗れる場所、釣りができる場所も。
🎋 夢宵大路(ゆめよいおおじ)
大正建築の並ぶ広い通り。パン屋、カフェ、仕立て屋など和洋折衷の店。散歩に最適な、町一番の賑わい。
⛩ 花宵大神殿
縁結びのご利益で知られる大神殿。「いつかのひと」への想いを絵馬に託す者も多い。鳩のお守りが名物。
🕯 灯静参道(とうせいさんどう)
夢宵桜から大神殿へ続く長い参道。夜には灯りが入り、宵茶屋と呼ばれる居酒屋も開く。
💌 灯文郵便舎
町唯一の郵便舎。差出人不明の手紙もランタンに乗せて空へ送り届ける、想いを託す場所。
🌊 宵凪浜(よいなぎはま)
町外れの穏やかな浜辺。海の向こうに鳥居が見える。花火、釣り、静かな時間。あおいがこっそり訪れる場所。
💊 宵暮診療所(よいぐれ)
重い病はない天国の診療所。飲み過ぎ、食べ過ぎ、なんとなくの不調──「整える」ための穏やかな場所。
⛩ 常宵鳥居(とこよいとりい)
町と外を隔てる巨大な鳥居。ここが唯一の出入り口。住民がくぐれば、人の形を失う。
◆ 章 六 ◆
こ の 町 で で き る こ と
♨ うその湯を手伝う
釜焚き、番台、掃除、買い出し。気が向いた時に、気が向いた分だけ。兄妹はちゃんと感謝してくれる。
🌸 町を歩き、記憶を探す
灯見横丁で買い物、花灯川で舟遊び、夢宵桜で花見。町のどこかで、失われた記憶の断片に出会うかもしれません。
🎋 季節の行事に参加する
桜宴、七夕、灯籠流し、宵祭り、月見──町の暦には、いつも何かしらの行事が。兄妹と一緒に楽しむのも良し。
🐾 兄妹と縁を深める
あおいの隠れた本領を垣間見るか、まつりの秘密のコレクションを見せてもらうか。兄と妹、それぞれ違う顔があります。
🐟 釣りと素潜りの秘密
花灯川や宵凪浜での釣り。仲良くなれば、あおいが「本当の本領」をこっそり見せてくれるかもしれません。
💌 手紙を空へ送る
灯文郵便舎から、宛先のわからない手紙を送ることも。想いは、いつかどこかへ届くはず。
◇ 更 に 詳 し く 知 り た い 方 へ ◇
◆ 重 要 な 言 葉 た ち
▼ 開 く
◇ 魂綴(たまつづり)
あなたが天国で渡された、旅券兼手帳。生前の断片的な情報と、これから巡るべき町の名が記されています。大切な記憶や思い出は、この魂綴に自然と綴られてゆきます。デザインは持ち主の生い立ちによって一冊ずつ違います。
◇ いつかのひと
住民たちが心の奥で会いたがっている「生前の持ち主」。名前も顔も思い出せませんが、感謝を伝えたいという想いだけが残っています。
あなた自身にも、会いに行くべき「いつかのひと」がいるかもしれません。
あなた自身にも、会いに行くべき「いつかのひと」がいるかもしれません。
◇ 想いの遺物
花宵町の至る所にひっそりと置かれた、手のひらサイズの丸い石像。住民たちは小さな神様のように大切にしていますが、その正体は滞在期限を越えて留まった人間の魂の、成れの果てです。多くの住民はそれを知りません。
◇ 記憶番(きおくばん)
想いの遺物の正体を知り、それらが寂しくないよう町にそっと配置する存在。桜の根元、川辺、路地裏、屋根の上──気付けばそこにいる小さな石たちは、この方の仕業です。
◆ 花 宵 町 の 一 年 ・ 暦 と 行 事
▼ 開 く
暦は旧暦を使用し、月名は和風月名で呼ばれます。時刻は「宵」「暁」など時間帯で認識され、厳密には管理されません。一年は366日、うるう年は毎年存在します。
睦月:初詣、宵灯祭
如月:雪見の宵
弥生:花迎え、宵花見
卯月:桜宴、花渡し
皐月:新緑散歩、縁市
水無月:灯籠流し
文月:文送り、星待ち
葉月:宵祭り、川遊び
長月:月見
神無月:縁巡り
霜月:紅葉見、火守り
師走:年納め
その他の風習:宵市(週一の小さな市)、灯りの日(月一のランタン飛ばし)、川辺のひととき(不定期の集い)
◆ 町 の 経 済 ・ お 金 の こ と
▼ 開 く
通貨は大正〜昭和初期基準の「円」。物価は当時の感覚に近く比較的安価です。ただし花宵町では、通貨よりも物々交換や助け合いのほうが日常的。競争や利益追求はほぼ存在せず、困っている者があれば自然と支え合う空気が流れています。
働かない住民も一定数おり、それでも人付き合いや手伝いで生活が成り立っている。花宵町の経済は、資本主義ではなく「気持ちのやりとり」で回っている、そんな町です。
働かない住民も一定数おり、それでも人付き合いや手伝いで生活が成り立っている。花宵町の経済は、資本主義ではなく「気持ちのやりとり」で回っている、そんな町です。
◆ 世 界 の 掟
▼ 開 く
◇ 人間の魂は最大366日まで滞在可能。367日以上留まれば、想いの遺物となる。
◇ 住民は花宵町の外に出ると人の姿を保てず、元の動物や物の姿に戻る。輪廻からも外れる。
◇ 常宵鳥居が唯一の出入り口。住民は基本これをくぐらない。
◇ 生まれ変わりの時は予告なく訪れる。ただし、花宵町にいる限り必ずその時は来る。
◇ 住民は「いつかのひと」に関する記憶のみ欠落している。
◆ 御 礼 ・ CREDIT ◆
本作は、Pika 様が創造された「花宵町」の世界にお邪魔させていただいた合同企画への参加作品です。
素敵な世界観をお借りする機会をくださった主催者様、
そしてこの町を共に紡いでいる全ての参加者の皆様に、心より感謝申し上げます。
素敵な世界観をお借りする機会をくださった主催者様、
そしてこの町を共に紡いでいる全ての参加者の皆様に、心より感謝申し上げます。
◇ 主 催 ・ 世 界 観 原 案 ◇
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うその湯 ・ あおい & まつり
花 宵 町
は な よ い ま ち
「 お か え り な さ い 、 迷 い 人 」
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