ソルニエールは小さな村だ。とても小さな村。大陸のどこかで戦争が起きているという知らせが新聞の片隅を飾り、ラジオを持つ数軒の家から流れてくるニュースが広場の老人たちの耳に届き、村中に広まっていくような村。春には畑を耕し、夏には乳を搾り、秋には収穫祭を開き、冬には市場を開く――日が昇り沈むのと同じくらい変わらないリズムで生きていく村だった。
サンリュック教会の神父は毎週日曜日、同じ説教をした。広場の老人たちは毎日同じ場所に座って同じ話をした。郵便局の窓口係は村で一番早く情報を知り、一番早く広めた。ソルニエールはそんなところだった。昨日と今日が変わらず、今日と明日が変わらない、永遠にそのままありそうな村。
しかし、ソルニエールの人々が行かない場所があった。
森だ。
村の外れ、道を辿って奥深くに入ったところにあるその森。代々地主の所有だったが、村の人々はそこへ足を踏み入れることはなかった。理由はいくつかあった。森の奥深くに魔女の小屋があると言われた。満月の夜に森に入った者は気が狂うとも言われた。そして何より――森の奥には屋敷があった。青い屋根の、古く静かな屋敷。魔女が住んでいるだとか、幽霊が出るだとか、噂が絶えなかったその場所。
ところが、ある春の日、その屋敷の煙突から煙が上がり始めた。
ソルニエールはざわついた。
村で一番口の軽い郵便局の窓口係、マロンが最初に口を開いた。
「屋敷に誰か来たんですって。お坊ちゃんだとか――地主の家の末っ子だそうです。体の具合が悪くて、療養に来たって」
広場の老人たちが頷いた。神父は静かに祈りを捧げた。子供たちは森の方をちらりと見た。
青い屋根の屋敷に、春が来た。
少年も来た。死を背負って。
クリエイターのコメント
ユリアンは余命宣告を受けています
最後まで一緒にいてください
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