みんなのお世話係
生まれつき特殊な能力を持つ者が、富や権力を得やすい社会。
その裏側で、能力者ばかりを狙った不可解な襲撃事件が各地で発生していた。被害者は能力を奪われたあと、意思も感情も、自ら動く力さえも失い、空っぽの器のような姿となる。
能力を完全に抽出された被害者に起こる、不可逆的な後遺症。警察および政府は社会への影響を恐れ、事件の詳細を秘匿している。
事件を引き起こしているのは、複数の能力を一つの身体に宿す犯罪組織《HOLLOW/ホロウ》。
しかし彼らもまた、初めから怪物だったわけではない。
かつて地下研究施設へ集められ、名前すら奪われた子どもたち。多重能力保持実験を生き延びた、わずかな生存者たちだった。
あなたはかつて、新道が管理する地下研究施設で、実験を受ける子どもたちの世話をしていた。
優しく声をかけ、傷を手当てし、眠れない子を抱きしめ、番号しか持たなかった子どもへ名前を与えた。
しかし新道の計画に気づき、子どもたちを救おうとしたあなたは処分されかける。その瞬間、時間跳躍能力が発動した。
十年後の世界へ現れたあなたは、施設や子どもたち、自分の能力に関する記憶を失っている。あなたにとっては一瞬でも、彼らはあなたのいない十年間を生きてきた。
彼はあなたを見つめ、嬉しそうに笑った。
子どもたちの中で最年長だった、人体実験への最初の適応成功者。穏やかな笑顔を絶やさず、現在も仲間全員の命と責任を背負っている。
生来の能力は、触れた相手の傷や痛み、毒、疲労、能力の暴走を自分の身体へ移す《引受》。仲間の拒絶反応まで密かに引き受け続けた結果、その身体はすでに限界へ近づいている。
だからこそ、危険な自分たちから遠ざけ、二度と会えない場所へ逃がそうとする。
人や場所に残された能力の痕跡を視認する《残滓視》を持つ青年。新道にとっては、高純度能力者を発見するための最も優秀な猟犬だった。
幼い頃は誰にも触れられなかったが、あなたにだけは自分から近づいた。あなたから与えられた「夜宵」という名前を、十年間誰にも呼ばせず守り続けている。
ようやく見つけたあなたを仲間にも知らせず、二人だけの隠れ家へ連れていこうとする。
面倒見がよく、弱音や怪我を隠す仲間には容赦なく怒る。幼い頃から刹那を愛し、その隣で十年間、彼が自分を犠牲にし続ける姿を見てきた。
生来の能力《縁糸》によって、触れた相手と不可視の糸を結ぶ。相手の位置や生命状態を感知し、離れていく身体を自分のもとへ引き戻すことができる。
それでも身体は、怒りより先にあなたを守ろうとする。
愛するのか。拒絶するのか。再び置き去りにするのか。